D810のレポート

はじめに

D810-3

D810を購入しました。有効3635万画素のイメージセンサを有するフルサイズの一眼レフカメラです。解像力を中心にレポートしてみたいと思います。

 

vs D600

はじめに、有効2426万画素のイメージセンサを有するD600と画像の解像感を比較してみたいと思います。D600はこれまでのぼくの愛用機だったので、どのくらい違いがあるのか興味がありました。

 

D810-PPT.001

上図は200 mmの望遠レンズで撮影しました。D810とD600のそれぞれで撮影し、画像中心部のブーケを拡大して解像感を比較してみようと思います。

 

D810-PPT.002

D600は「高画素派」に属するカメラのはずですが、画素数に勝るD810のほうが明らかにシャープでメリハリ感のある画像が得られています。花弁の輪郭やレンガの模様がくっきりとしていて、色のにじみがありません。

 

これだけ差があるとは思っていなかったので、とてもびっくりしました。D600は軽いし、使い勝手がいいのでこれからも使っていこうと思っていましたが、これだけ差があると持ち出す機会は減ってしまうかもしれません。。ニコンが「最高画質」と自賛するのも納得です。

 

ちなみに画像の鮮鋭感が増したのには、D810に搭載の画像処理エンジン(EXPEED4)と、D600の画像処理エンジン(EXPEED3)の画作りの思想が異なることも少なからず影響していると思います。EXPEED4は、従来よりもハイライトの冴えやシャドーの締まりを重視した画作りを行っていると言われています。

 

D810の特徴(の一部)

ここで、D810について簡単に振り返ってみたいと思います。

 

「D810」は、2012年の春に登場した「D800/D800E」の後継機として、2014年の夏に販売開始されました。2015年5月現在、一眼レフ界の最高画素機として有名で、おもに高画素派のユーザーに人気があるようです。

 

D800シリーズでは光学ローパスフィルターありなしの2タイプが用意されていましたが、D810ではローパスフィルターレス機のみが市販されています。D800Eをさまざまなシーンで撮影した経験から、必要以上に偽色やモアレを気にすることはないと判断したとのこと。

 

また、センサ面では、ベース感度としてISO64を実現した点が話題になりました。ISO100までのカメラに比べて2/3段分多くの光電子を電荷蓄積部に蓄えることができるようになったようです。

ISO100までの素子に比べて、飽和耐性、ノイズ耐性の面で有利になるはずですが、大した差があるとは思えず、実用上はシャッタースピードを2/3段分遅くできる点がメリットなのかなと思います。

 

メカニカル面では、ミラーのモータ駆動化と、シャッターユニットの防振対策が施された点が注目されました。一眼レフカメラでは、ミラーが跳ね上がった際の振動(ミラーショック)とシャッターが動いた際の振動(シャッターショック)がカメラブレの大きな要因になるので、多画素化のメリットを十分に活かすためには、ミラーとシャッターで発生する振動をなるべく抑える工夫が必要でした。

 

具体的には、ミラーのモータ駆動化により、ミラーの速度を細かく制御できるようになりました。初期は高速に動かして、上り切る直前に速度を落とし、軟着陸させることでミラーショックを抑えています。

平均速度が低下する分、公称のレリーズタイムラグはD800Eが約0.042秒であるのに対し、D810は約0.052秒とわずかに遅くなっていますが、実用上はなんの問題もないでしょう。

 

また、シャッターの防振対策がどのようなものかは不明ですが、作動音は明らかに低く、静かになっているようです。加えて、シャッターショックをより完璧に抑えるために、電子先幕シャッターを使用することができるようにもなりました。

超望遠撮影時など、ほんのわずかな振動が大きく影響するシーンやスローシャッター時には電子先幕シャッターが大きな効果を発揮すると思われます。

 

電子先幕シャッターとは

レンズ交換式デジタルカメラの多くが、フォーカルプレーンシャッターを採用しています。イメージセンサのすぐ近くに装備されるため、フォーカルプレーン(焦点面の意)シャッターと呼ばれています。

 

このシャッターの動作原理としては、まずシャッター幕(カーテンのようなもの)のうちの1枚がイメージセンサを覆い、もう1枚がセンサの外側に待機します。その後、センサを覆っていたシャッター幕が開き始めることで露光を開始し、センサ外に待機していたシャッター幕を閉じることで露光を終えます。

露光を開始させるシャッター幕を先幕(さきまく)、露光を終えるシャッター幕を後幕(あとまく)と呼びます。

 

電子先幕シャッターとは、このメカニカルな先幕シャッターの役割を、イメージセンサの電子的な制御で代用しようとするものです。先幕のメカニカルな走行がなくなる分、カメラ内部の機構ブレが小さくなるということですね。

 

D810-PPT.003

メカニカルシャッターの場合、先幕がセンサを覆った状態で全画面同時に蓄積電荷のリセット(初期化)を行うのに対し、電子先幕シャッターの場合は、先幕が開き切った状態でセンサの片端から順に電荷の蓄積をリセットしていきます。

そして電荷のリセットと同時に信号電荷の蓄積をスタートすることで、実効的には、メカニカルな先幕が動く場合と同じことをすることになります。

 

電子先幕シャッターはどのような場合に有効か

一般に、カメラが振動し続けているときに露光し続けてしまうと、画像の解像度が低下します。

シャッター速度が十分早ければ、カメラがある程度振動していても画像はブレません。振動の一部分を捉えるだけだからです。また、シャッター速度が十分遅ければ(露光時間が十分長ければ)、突発的なブレが生じても画像の解像度が著しく低下することはありません。長時間の露光で蓄積する電荷の総量に比べれば、多少の増減は微々たるものだからです。

 

シャッターショックによって発生した振動についても、定性的には同じことが言えるはずです。

しかし、具体的にどのくらいのシャッター速度(露出時間)にするとシャッターショックの影響が現れるのかについては、実験してみないことにはわかりません。シャッターショックによって発生する振動の性質(周期や時定数)を知る必要がありますし、ブレへの耐性という点では、レンズの焦点距離や被写体との距離も重要なパラメータになり得るからです。

 

後幕が動きだすタイミングがひとつの勘所になるかもしれません。

シャッター速度が速い場合には、先幕が開き切る前に後幕が動き出すので、シャッターショック(ここでは特に先幕が停止する際に発生する振動の意)が画面全体に与える影響は比較的小さいと思われます。一方で、シャッター速度が遅い場合には、先幕が開き切った後に後幕が動き出すので、画面全体がショックの影響を受けてしまう可能性があります。

 

ちなみにD810の場合、シャッター速度は最高で1/8000秒で、このレベルのスペックのシャッターユニットの場合、シャッターの移動速度である「幕速」は秒速9メートル程度と思われます。

よってフルサイズセンサの短辺の長さである2.4センチを走り切るのにおよそ1/370秒程度かかる計算になるので、シャッター速度が1/370秒よりも遅くなると、先幕が開き切った後に後幕が動き出すことになります。

 

シャッターショックの大きさは

「日経エレクトロニクス」の2009年5月4日号に面白い記事があります。電通大らのチームが、ミラーおよびシャッターによって生じるカメラブレの時間変化を定量的に測定しています。

 

実験で使用したカメラのモデル名は伏せられていますが、画素ピッチが6ミクロン前後のフルサイズ機を2種類ためしたとのこと。市場シェアを考えれば、ニコンとキャノンを一台づつ試すのが筋でしょう。2000万画素クラスのカメラのはずなので、記事が書かれた時期を考えると、ニコンのD3xとキャノンのEOS 1Ds M3なのかもしれません。

 

肝心のデータには、ショックによって発生した振動がゼロに収束していかないのはなぜだろうとか、この測定系ではそもそも定常状態でどのくらいブレているのかとか、どうして0.02秒が1/50秒ではなくて1/60秒なんだ(いちおう近似になっている)とか、いろいろと疑問に思うところがあるのですが、細かいことに目をつむれば、データから以下のことが分かります(見方によって数字が多少前後するかもしれません)。

 

・シャッターショックによって発生する振動の最大振幅は、プラスマイナス1画素分

・シャッターショックによって発生する振動の振幅ははじめの1/25秒間で大きく、1/8秒後に概ね収束する

・ミラーショックによって発生する振動の最大振幅はシャッターショックの2~3倍程度大きく、1/8秒後に半減する

 

これが本当だとすれば、約3600万画素のD810ではシャッターショックによってプラスマイナス2画素分程度のブレが生じ得ることになります。これでは実質的な解像度は激減し大問題になります。

 

しかしシャッターユニットも日々進化しているはず。

D810に搭載されたものにも新たに防振対策が施されているとのことですし、写真に現れる悪影響の大きさや電子先幕シャッターの効果について、実際のところは実機で検証してみるほかなさそうです。

 

電子先幕シャッターの効果のシャッター速度依存性

シャッター速度を1/50秒から1/400秒まで変化させて撮影し、電子先幕シャッターの効果を確認します。また、せっかくなので、レリーズケーブルとミラーアップの効果についても確認してみたいと思います。

 

D810-PPT.004

1/50秒で撮影した結果をまとめました。「D810 vs D600」の項目で採用した方法で比較しています。

 

まず、レリーズケーブル使用の効果がはっきりと現れていることがわかります。細心の注意を払ってボディのシャッターボタンを押していたつもりですがダメですね。

また、花弁の鮮鋭感を比べると、ミラーアップ(Mup)の効果もはっきりと確認できます。D810ではミラーショックを抑える工夫が施されていますが、ゼロにはできませんでした。

さらに、花弁のシャープさやレンガ模様のメリハリ感を比べると、電子先幕シャッターの効果がはっきりとわかります。

 

1/50秒は、個人的にはよく使うシャッター速度の範囲内で、電子先幕シャッター機能はとても重要だと思いました。

 

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1/100秒です。この場合でも電子先幕シャッターの効果は大きい様子。一方、レリーズケーブルなしでも、解像感が大きく損なわれることはない様子。

 

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1/200秒です。この場合でも電子先幕シャッターの効果が現れています。一方、ミラーアップ(Mup)なしでも、解像感の大きな劣化はない様子。

絞りがゆるくなってきたおかげで、光の回折の影響が軽減されて画像が全体的にシャープになっています。

 

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1/320秒です。うーん。電子先幕の効果は、だいぶなくなってきたような。。

 

D810-PPT.008

1/400秒です。電子先幕、あってもなくても一緒かな。。

 

ということで、200 mmのレンズを使う場合には、1/200秒よりも遅いシャッター速度の場合に明確な効果が得られました。

また、100 mmのレンズでも試してみましたが、ブレに対しての耐性が増す分、1/100秒よりも遅いシャッター速度の場合に効果が得られていたようでした。

個人的には常時「電子先幕シャッターON」に設定しておくのが良いのかなと思います。(仕様上はミラーアップ時のみ有効に出来ます。)

 

ところで電子先幕シャッターにももちろん欠点はあります。

「露出ムラ」や「食い違い」と呼ばれる現象が有名ですが、「O plus E」の2013年9月号の豊田氏の記事によれば、「いずれの問題点もシャッター速度が最高速に近く、しかも射出瞳の位置や設定絞り値が極端な条件で発生するもので、通常の撮影ではまず問題ない」そうです。

 

D810で手持ち撮影は可能か

D800/D800Eが登場した際には、高画素ゆえに手ブレに敏感で、手持ちの撮影が難しいと言われていたようです。D810では、メカニカル面でのいくつかの進化のおかげで、そのような声は小さくなったそうですが、果たして本当でしょうか。

 

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シャッター速度を変えて手持ち撮影してみた結果をまとめました。手持ち補正機構(VR機構)はONにしました。このレンズの場合、3.5段分の手ブレ補正効果があります。

 

テスト撮影の結果、「焦点距離分の1秒より早いシャッター速度なら手ブレしにくい」というよく知られた経験則に従って撮影すれば、ブレが大きく目立つことはなさそうだ、ということがわかりました。日中の撮影ならば、手持ちでそれなりに撮影できてしまいそうですね。

 

撮影歩留まりはどのくらいか

もう少し踏み込んで、手持ち撮影での撮影歩留まりを見積もった結果を紹介します。D600を使用する感覚でD810を使うと痛い目をみるかもしれないので、なによりもまず確認しておきたかった点がこの撮影歩留まりでした。

 

D810-PPT.010

はじめに、D600を使用した場合の撮影歩留まりをまとめてみました。

 

焦点距離とシャッター速度のそれぞれの組み合わせで10枚のテスト撮影を行い、ブレの少ない写真(「電子先幕シャッターの効果のシャッター速度依存性」で丸をつけたレベルの写真)の数をカウントして撮影歩留まりを見積もりました。

 

結果的には、いわゆる前述の「焦点距離分の1秒」のルールを守れば、9割以上の高い撮影歩留まりが得られることがわかりました。

 

D810-PPT.011

つぎに、D810を使用した場合の撮影歩留まりをまとめてみました。

 

有効画素数だけみれば約1.5倍になるので、歩留まりはかなり悪くなるのではないかと予想していましたが、結果的には、シャッター速度が焦点距離分の1秒以下なら、8割以上の十分に高い撮影歩留まりが得られることがわかりました。

 

D810-PPT.012

違いをわかりやすくするために、D810の歩留まりからD600の歩留まりを差し引いて、差分を求めました。

 

前述のように、シャッター速度が焦点距離分の1秒以下なら、D600を基準にした場合の歩留まりの低下は1割程度と小さい数字に収まっています。メカ機構の進化が威力を発揮しているのかもしれません。かなり安心できる結果になったと感じています。

一方、焦点距離が長く、かつシャッター速度が遅くなる場合には、急激に歩留まりが低下することがわかりました。「焦点距離分の1秒」より遅い速度での手持ち撮影は控えなければいけません。

 

ちなみに、200 mmの1/25秒と1/13秒で差分が小さいのは、そもそもD600でもほとんど撮影できていなかったからです。

 

おわりに

まとめると、D810(36.3 MP、EXPEED4)を用いたテスト撮影の結果、おもに、

 

・D600(24.3 MP、EXPEED3)に比べて、明らかに解像感の高い画像が得られる

・100 mmのレンズなら1/100秒よりも遅いシャッター速度で、200 mmのレンズなら1/200秒よりも遅いシャッター速度で、電子先幕シャッターの効果がありそう

・シャッター速度が焦点距離分の1秒以下なら、D810の手持ち撮影で8割程度の歩留まりを確保できそう(3.5段分のVR付き)

 

ということがわかりました。個人的には画像の鮮鋭感は期待以上でした。また手持ち撮影でも高い歩留まりが得られるので安心できました。

また今回は取り上げませんでしたが、D810にはほかにも

 

・ライブビュー表示でのピントの山が劇的につかみやすくなった

・静止被写体への位相差オートフォーカス(AF)の精度が上がった

・グリップが握りやすくなり、長時間撮影しても疲れにくくなった

 

などの有益な進化がありました。

 

カメラを初めてしばらく経ちますが、最近になって、これはもしかしたら長く続けられる趣味になるかもしれないと思いはじめ、思い切ってD810を購入しました。

いまは風景を中心に撮影を楽しんでいますが、知識と機材を蓄えて、もっとたくさんの被写体と向き合っていけたらいいなと漠然と考えています。

 

この記事がD810の購入を考えている方やユーザーの方の参考になればうれしいです。(了)

 

ご覧いただきありがとうございました!
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